※別のところで書いていた読書記録を転載。
実際に読んだのは2023年1月2日くらい。
『赤ひげ診療譚』山本周五郎
「ちぐさは自分のしたあやまちで傷ついた、天野さんも、父も、それぞれの意味で傷ついた、そのなかで、おれ一人だけが思いあがり、自分だけが痛手を蒙ったと信じていた、いい気なものだ」
〈人間のすることにはいろいろな面がある。暇に見えて効果のある仕事もあり、徒労のようにみえながら、それを持続し積み重ねることによって効果のあらわれる仕事もある。おれの考えること、して来たことは徒労かもしれないが、おれは自分の一生を徒労にうちこんでもいいと信じている。〉
〈おれは盗みをしたことがある、友を売り、師を裏切ったこともある、と去定はいつか云った。その言葉が、現実にどれほどの意味をもっているかわからないけれども、登を立直らせた辛抱づよさや、貧しい人たちに対する、殆んど限度のない愛情を見ると、自分の犯した行為のために贖罪をしている、というふうにさえ感じられるのであった。ーーー罪を知らぬ者だけが人を裁く。登は心の中でそう云う声を聞いた。ーーー罪を知った者は決して人を裁かない。〉
〈登は急に胸が熱くなるのを感じた。まさをの気持はもうきまっている、考えてみるまでもないし、どんな辛抱でもする気になっている。そして、それは意志のない盲従ではなく、どういう状態にも耐えてゆこうという、積極的な肯定の上に立っているように思われた。〉
「よく聞け、犬畜生でさえ、仔を守るためには親は命を惜しまないものだ、自分は食わなくともまず仔に食わせる、けものでも親はそういうものだ、きさまは犬畜生にも劣るやつだぞ」
再読。一体何度読んだことか。
好きだー。未だにこの本が一番好き。きっとこれからも一番好き。好き。
みんな全然利用しない高校の図書室でなぜか目を惹かれて手にした本。
入口近くの白い回転式本棚のやや上段にあったよね。
昔の文庫本だったから紙も茶色く焼けてるし、字もちっさいし、少々読みにくかったけど、でも内容がすごく温かくて人情味があって面白くて、ずーっと借りてたなぁw
なんでかクローゼットの上段、ピンクのピアニカの上に常においていたなぁ。
このままじゃ借りパクやん!と卒業ギリギリで返却したなぁ。
その後自分で買ったこの本にも愛着あるけども、あの日焼けした字のちっさい本もずーっと心に残ってる。
今も高校にあるのかな~。
数年に一度くらいでもいいから誰かに読んでもらえてるといいなぁ。
▼さわやかな読後感がちと似ているかも。この本も大好き。