※別のところで書いていた読書記録を転載。
実際に読んだのは2022年10月19日くらい。
『アラスカ 永遠なる生命』星野道夫
〈きっと人間には、ふたつの大切な自然がある。日々の暮らしの中でかかわる身近な自然、それはなんでもない川や小さな森であったり、風がなでてゆく路傍の草の輝きかもしれない。そしてもうひとつは、訪れることのない遠い自然である。ただそこに在るという意識を持てるだけで、私たちに想像力という豊かさはを与えてくれる。そんな遠い自然の大切さがきっとあるように思う。〉
〈そして、冬の訪れは、なぜか心地よい諦めを人の心にもたらしてくれる。それはどこか、雨の日を家で過ごす気持ちに似ている。〉
〈そして、雪とはなんと温かいものなのだろう。(中略)大地を覆う雪のブランケットがなければ、その下で冬を越す多くの動物たちは、酷寒の冬を生きのびることができない。雪の暖かさは、ぼくたちの気持ちにさえ伝わってくる。無機質な白い世界は、人の心にあかりを灯し、かすかな想像力さえ与えてくれる。雪のない冬景色ほど寒々しいものはないと思う。〉
〈ぼくを見つめているハクトウワシには、過去も未来も存在せず、まさにこの一瞬、一瞬を生きている。そしてぼくもまた、遠い昔の子どもの日々のように、今この瞬間だけを見つめている。一羽のワシと自分が分かち合う奇跡のような時間。過ぎ去ってゆく今が持つ永遠性。そのなんでもないことの深遠さに魅せられていた。〉
〈日々の暮らしのなかで、“今、この瞬間”とは何なのだろう。ふと考えると、自分にとって、それは“自然”という言葉に行き着いてゆく。目に見える世界だけではない。“内なる自然”との出会いである。何も生みだすことはない、ただ流れてゆく時を、取り戻すということである。〉
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〈はじめのうちは、自分の見た情景を、こまやかに表現していたように思うけれど、だんだん哲学めいた言葉が出てくるようになった。ひとりテントの中で、何日も何日もいろいろなことを考え、動物たちに出合って、そうした時間を過ごすうち、大きな自然の中で生かされている自分に気づきはじめた。そしてそれが、道夫の書くものにも投影されていった…そうだったんだろうと思うんです。〉(父・星野逸馬)
アラスカで出会った動物たちについてのエッセイをまとめたもの。
こちらも写真盛りだくさん。
今まで読んだ星野本の中で、一番人とのエピソードがない。動物・植物中心。
これはこれで良かった。いつもと違う感じ。
厳しい自然の中生きる動物たちから、生きる力を少し分けてもらえる。
津波のようなカリブー
じゃれ合う子グマの兄弟
背丈はサラブレッド超え、体重は牛を凌ぐ巨鹿ムース
イチゴのかわりにキノコを置いていくアカリス
卵を守るため人を襲うシロフクロウ
青く輝く氷塊の上で休むカモメ
雪原の上のタテゴトアザラシ
ブリザードの中さまようホッキョクグマの親子
母ギツネの帰りを待ちながら遊ぶホッキョクギツネの兄弟
険しい岩場に佇むドールシープ
円陣を組むジャコウウシ
極北に咲く小さな花々
すごい世界だなぁ。そして単純に可愛くて癒やされた☺️
▼最初に読んだ星野本。これを読んで星野道夫ブームが到来。
▼こちらも写真いっぱいでよかった!